皆さん、こんにちは。
『○○の秋』よく口にする言葉ですが、あなたにとって、秋はどんな季節ですか?食欲?スポーツ?読書?芸術?ともあれ、秋は色々なことを楽しめる、過ごしやすい季節ですよね。
今回は、秋の夜長に気をつけて頂きたいことをお話し致します。
最近、3D対応の機器が急速に増え、私達の生活のごく身近な存在になりつつあります。3D映像は、今までの2次元での映像に比べて臨場感に満ち、子供から大人まで興味深い存在であろうと思われます。ただ、時として目の健康を害する事があります。
以前、私が実際に経験した患者さんです。40歳の男性が、3日前に3D映画を鑑賞し、翌朝起床時から複視(1つの物体が2つの像に見えること)を自覚。めまい・遠近感喪失を自覚されるも、近医受診にて問題無いと言われ、私の診察にはセカンドオピニオンでいらっしゃいました。発症からの2日間、症状は悪化してきているとのことでした。所見としては明らかな眼位異常(両眼とも内斜視)・立体視喪失を認めました。診断は、急性内斜視です。その方は脳外科紹介後、原因が判明し、早期発見により快復に向かわれました。3Dによる直接的な弊害ではなく、発症の引き金となった例です。
両眼視とは、両眼を同時に使って物を見ることを言います。
立体視とは、一つの指標を左右眼それぞれの位置から見る為に、左右の網膜(外界から入ってくる情報を映す眼内のスクリーン)に映る若干異なった映像を脳で融合・判断して、立体感や奥行きといった視感覚を作り出すことを言います。
3Dの原理は、左右の眼に異なる指標(右眼用の映像・左眼用の映像)を見せて、自然界にはあり得ない仕組みを無理やり脳の知覚を使って合成させているのです。
立体視は、追視が始まる生後3カ月~6カ月頃に急速に発達し、4~5歳頃までには完成します。つまり、それ以降にいかなる治療を施しても回復の可能性は無いということです。未就学児童の皆さんが、丁度この視機能・立体視の発達期に当たります。携帯電話や携帯型ゲーム機等でも3D対応機器が増えてきていますが、視機能発達期に3Dに接触することは、時として立体視喪失・内斜視等の弊害を起こしうること、さらに斜視が治らず手術に至るケースもあることを、くれぐれもご存じ頂き、ご注意頂きたいと思います。
また、視機能の成長の臨界域は平均8歳(~10歳まで治療効果があったという報告もあります。)までですから、少なくとも小学生の間は注意深く対応すべきと考えます。また、上記のごとく大人であっても3Dは眼にとって負担が大きいものです。無理の無いよう、お楽しみ下さい。
『2015年9月7日 Facebookにて投稿』